代理店クリエイターだった35年。
コピーライターとして5年、CMプランナーとして10年、クリエイティブディレクターとして20年やってきた。
今までに自分が作った膨大な数のCMをざーっと見てみると、CMプランナー時代に作ったものが中でも圧倒的におもしろい。一個一個、毎回いろんな表現を試しているのがわかる。失敗作もあるが冒険心にみちた意欲作が多い。今流しても新しいのではないか、と思われるものさえある。
そういう意欲的な作品の中にこそ「自分らしさ」がきらりと見える。
何よりも、自分がすごく楽しそうだ。
あの頃は失敗しても怖くなかった。たとえ転んでも、うまく良い方向に転がるような気がしていた。そういうときは失敗しないのである。
作ったCMはヒットし、賞を取り、仕事がたくさん来るようになり、私は昇進してクリエイティブディレクターになった。
作品集を見ると、CDになっても始めの10年間はまだ楽しそうに作っている。
でも最後の10年は、見ていて悲しい気持ちになってきた。
ちっとも楽しそうじゃないのだ。
自分が「仕事と思っていること」がいつの間にか変質していたのだ。
「世の中をあっと言わせること」から
「会社員として周囲を満足させること」に。
最後の10年間は、仕事をしていても楽しくなかった。
自分らしくない自分にたぶん腹を立てながら仕事をしていた。